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2023.11.09
吉原で起きた事件が由来となった歌舞伎「籠釣瓶」には八ツ橋が、
落語「紺屋高尾」には高尾が、と
花魁は現代まで続くさまざまな作品に登場します。
装飾性の高い打掛をまとい
前帯には豪奢な刺繍、足元は黒塗りの高下駄と
その姿はたいそうあでやかなものでした。
上級遊女特有の髪型として有名なのが横兵庫。
もとは髷を高く輪にした「兵庫髷」から発達した髪型で、
はじめに髷が倒れて両輪になり
しだいに髷が大きく、羽根を広げた蝶のような形になりました。
髪飾りは金銀、鼈甲などの高価で稀少な素材を華やかに飾ります。
鼈甲の櫛を2枚、3枚と重ねづけし
簪は10本以上挿すこともありました。
後ろ姿に目を向けると、
菊結びをした金糸の装飾が威厳や格式さえも感じさせます。
しかし花魁の放つ魅力は
髪型や衣装によるものだけではありません。
高い身分の相手と十分にわたり合えるほどの幅広い学識、教養をもち...
芸事全般に精通している、その品格や自信があふれています。
花魁が生み出したよそおいや化粧法は
実際の姿を知らない庶民の女性にとっても憧れであったといいます。
文化・文政頃に生まれた「笹色紅」の流行もそのひとつ。
浮世絵にも描かれた、下唇に高価な紅をたっぷりと塗り
緑色に発色させたテクニックは斬新で、
江戸の女性たちを熱狂させたようです。
結髪雛形 横兵庫(江戸吉原)
Photo YURI MANABE