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2022.11.17
1920年代フランス。
第一次世界大戦で中断していた
社交の場ににぎわいが戻ります。
女性たちはイブニングドレスの着用が解禁となり、
細いウエストにふんわりしたスカートの伝統的なシルエットや
ウエストラインが低めで直線的なアール・デコ様式など
思い思いのドレスでおしゃれを楽しみました。
ヘアスタイルの主流は
20世紀初頭に発明されたパーマネントウェーブでしたが、
戦後には斬新なボブスタイルも登場します。
しかし「短く髪を切る」にはたいへんな勇気が必要だったため
ウェーブヘアを後ろでまとめて
ショートに見せるボブ風のスタイルが流行。
このシニヨン部分に手のひらほどの
大きな櫛を横から挿すのが人気のスタイルとなりました。
さながら蝶のような美しさをふりまく女性たち。
断髪風の髪型を楽しむための美のイノベーションでした。
これは飾り部分だけで20cm程度の大きな櫛ですが、
セルロイド製で、驚くほどの軽さです。
セルロイドの飾り櫛はアメリカを中心に機械生産され、
イミテーションストーンでアレンジされました。
曲線の加工がしやすい材質の特性を活かした
複雑な透かし彫りが目を引きます。
待ち望んだ夜会の再開。
とびきりのドレスに、妍を競うアイテムを身に着けて...。
パフュームの香り、ワイングラスの響く音、
弦の調べや人々の歓声が聞こえてくるようです。
束の間の平和と華やぎを手に入れた時代を
象徴するような櫛です。
イミテーションストーン装飾セルロイド製アメリカ櫛 1920~25頃
Photo YURI MANABE