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よそおう時間を映し出してきた鏡

031

よそおう時間を映し出してきた鏡

2022.07.14

鏡の歴史は古く、日本では弥生時代に
大陸から青銅鏡がもたらされたと考えられています。
明治時代にガラス製の鏡が普及するまでの長い間、
銅や錫などの金属製の鏡が使われていました。

鏡のかたちは時代とともにゆるやかに変化します。
丸いかたちの「円鏡」が主流でしたが、
室町時代になると中国・宋代の影響を受け
持ち手のついた「柄鏡(えかがみ)」が中心となります。
江戸時代中期には鋳造技術が進歩し、安価になったため
鏡は庶民にも広がっていきました。

江戸時代、柄鏡はどのように使われていたのでしょう。
大きな柄鏡は「鏡箱」に収めて鏡台や鏡掛けにセット。
ひと回り小さい柄鏡を手に持って、
合わせ鏡のようにペア使いしていました。
首筋の白粉の加減や、髪のまとめ具合をチェックする
様子を描いた浮世絵も多く残っています。

この鏡の背面は「南天」文様。
「難を転じて福となす」という語呂合わせや
赤い実が「火災除け」「魔除け」を表す
吉祥文様として好まれました。
鏡が収められている梨地の鏡箱は、
重く鈍く、しっとりとした光を放っています。
鏡と鏡箱、いずれも状態がよく
大切にされていたことがわかります。

金属製の鏡は使用していると鏡面が曇ってくるため、
定期的に磨く必要がありました。
専門の鏡研ぎ師の技によって
きれいに磨きあげられた鏡を手にした喜びは
どんなものだったでしょう。
自分と向き合う時間を映し出してきた
女性たちの必需品です。

南天文様柄鏡、梨地蒔絵鏡箱 江戸時代後期
Photo YURI MANABE

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