ポーラ文化研究所ポーラ文化研究所
ポーラ/オルビス ホールディングス
JP|EN
JP|EN
Search
Close
化粧文化 COSMETIC CULTURE
コスメのある風景
青い香水瓶に託された願い

029

青い香水瓶に託された願い

2022.03.10

20世紀初頭のニューヨーク。
経済の中心地となったマンハッタンには
多くの高層ビルが建設され、
近代的な摩天楼が誕生しました。

高くそびえる大都市のビル群を思わせる、青い香水瓶。
直線的で幾何学的なフォルムは
当時流行していたアール・デコ様式です。
デザインはルネ・ラリックが手がけ、
オートクチュールメゾンのウォルトから発売されました。

同じ頃、人工香料の発明やガラス加工技術の発達により
上流階級向けの最高級品だった香水は
大量生産が可能になり、一般に流通し始めます。

この香水の名は「Je Reviens(帰ってくる)」。
マンハッタンが都市の隆盛を見せる一方、世界的な大戦が続き
男性たちは戦地へと赴いていきました。
「きっと帰ってくる」という名をもつこの香水は、
若い男性から恋人への贈り物として人気を博します。

ジャスミン、イランイラン、ムスク...。
ナルシスがスパイシーなアクセントを添え、
そこにアルデヒドを調和させたモダンな香り。
どこか温かみをもつその香りが、
女性たちの心にそっと寄りそいました。

終戦を迎え、その役目を終えるかのように
「Je Reviens」は終売となります。
この青い香水瓶は
激動の時代に翻弄された恋人たちにとって
強い願いの象徴だったのです。

香水瓶「Je Reviens(ジュ・ルヴィアン)」
ウォルト社(デザイン:ルネ・ラリック) 1929年
Photo YURI MANABE

  一覧へ戻る  

この記事のタグから他の記事を検索できます

最新の記事

上へ