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2021.06.10
赤い宝石が目を引く、ハートのかたち。
これは「アジュク」と呼ばれる銀製の背飾りです。
中央アジアに位置し、シルクロードを旅した
トルクメニスタンの遊牧民が、
衣服に縫い付けたり、下げたりして
身に着けていました。
幸福をもたらす鉱物とされる銀に
呪術的な祈りをこめて、
鳥や雄羊の角などのモティーフが線彫りで表現されています。
赤い宝石はカーネリアンです。
血の色である赤は、神聖な色であり身を守ってくれる色。
この背飾りだけではなく、
胸飾りや頭飾り、腕輪や指輪など
赤い石がついたさまざまな銀製の装身具を
全身にまとい、旅をしていました。
危険を伴う移動を宿命とした遊牧民たち。
砂漠や草原を、馬に乗って旅をするなかで
背後の災厄から身を守ってくれるのが
このアジュクでした。
また、これらの装身具はお守りとしてではなく
財産としての役割や、社会的立場を表す役割も担いました。
遊牧民たちが肌身離さず持ち歩き、
守り継いできた宝物です。
アジュク(背飾り) トルクメニスタン 19世紀
Photo YURI MANABE