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2021.03.11
技巧を凝らした日本髪が、隆盛を極めた江戸時代。
文明開化による西洋化に伴い「束髪」が登場するも
日本髪は変わらず結われ、そのかたちは小ぶりになっていきます。
この櫛と笄は、そんな明治時代の日本髪にあわせた対の髪飾りです。
華やかな金蒔絵に浮かび上がるのは、
伝統的な図柄である流水桜楓紋と御所車。
淡い桜のピンクに川の水色、御所車の黒といった
多彩な色が、金色とのコントラストを強調しながら
鮮やかに、精緻に表現されています。
この文様は正面だけではなく、上部や側面、
裏面にかけても、ひとつの世界観として描かれています。
小さな髪飾りのなかに、美しさを仕込む細やかな手仕事。
ふり向いたときや、かがんだとき...ふとした仕草の折々、
その黒髪にさぞや美しく映えたことでしょう。
櫛と笄のコーディネートでこの世界観をまとう日は、
ひときわ華やぐ、特別なときだったのかもしれません。
御所車桜模様蒔絵鼈甲櫛・笄 明治時代
Photo YURI MANABE