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2021.01.14
手のひらに収まる、小さなケース。
これらはすべて、江戸時代に使用されていた
「紅板」という携帯用の紅入れ。
現代で例えるとリップパレットです。
紅板は、素材や大きさ、デザインもさまざま。
厚紙や木、金属、象牙などの素材に
透かし彫りや蒔絵、豪華な珊瑚象嵌をほどこしたものや、
内箱式の精緻な二重構造のものなどがあり、
職人の技とこだわりを見ることができます。
モティーフには、四季折々の花鳥風月や、
女性にとって身近なテーマである茶道具などをテーマにしたものが選ばれましたが、
武具職人が装飾品制作を手掛けるようになると、
刀の鍔、小刀などの男性の持ち物が
女性の化粧道具の意匠に取り入れられるようになりました。
女性たちの日常生活の中に彩りを添える
紅板を、丹念に制作した職人たち。
お気に入りの紅板と揃いの紅筆に少し水を含ませて紅をとり、
化粧をほどこす女性たち。
紅は高価だったということ、
そして江戸時代の化粧の中で唯一彩りを加える存在であったことから、
女性たちは紅や紅板を大切に保管、使用していました。
持ち主と作り手、それぞれの
こだわりと美意識が反映された化粧道具です。
紅板、いずれも江戸時代
Photo YURI MANABE