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化粧文化 COSMETIC CULTURE
コスメのある風景
花びら形の象牙簪

016

花びら形の象牙簪

2020.05.14

明治時代の花びらのようなかたちの象牙製の簪。
この丸みを帯びたフォルムには、植物の有機的な曲線を重要視した
アール・ヌーヴォーの影響がうかがえます。
当時のヨーロッパの流行をいち早く取り入れたモダンなデザインです。

なにより目を引くのが、立体的な花模様。
牡丹と菊の花弁が浮かび上がる背景には、
菊の葉が繊細な透かし彫りで表現されています。

葉脈まで刻まれた葉の地紋に小さな菊、
そこに重なるように咲き誇る大輪の牡丹と菊。
角度の変化により陰影が生まれ、気品ある表情を見せます。

この簪は、どのような髪型を飾ったのでしょうか。

明治時代には「日本髪」が依然として結われていた一方、
髪型の洋風化が始まります。

上流階級の間で洋装に似合う「束髪」が登場すると
徐々に一般的になり、全国に普及しました。
やがて大正時代になると、欧米から伝わったコテを使用して
ウェーブをつけてからまとめる髪型が流行し、
「洋髪」と呼ばれるようになります。

簪全体がカーブしているのは、「束髪」や「洋髪」で結われた
頭の丸みに沿う髷の形にあわせて飾るため。

新しい時代を生きた女性たちの
横顔や後ろ姿を彩った優美な簪です。

牡丹菊模様透し彫り象牙洋髪簪、明治時代
Photo YURI MANABE

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