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2021.09.09
ピンクに青、赤の花々が華やかなこのケースは、
大正時代に人気を集めた「千代田袋」。
明治時代に流行した巾着袋「信玄袋」から発展したもので
現代のバニティケースのような携帯性を重視した化粧ポーチです。
口を絞ることができる上段は小物入れ。
しっかりしたつくりの下段は
どのようになっているのでしょうか。
留め具を外し、ケースを開くと現れるのは
顔全体を映し出してくれる大きな鏡。
底部には小さな化粧品のつめ替え容器と櫛が
機能的に収納されています。
大正時代は交通網が発達したことで、観光の楽しみが広がりました。
すると「千代田袋は旅行に最適」などと雑誌でも宣伝され、
女性たちの心をつかんだのです。
愛用する化粧品をコンパクトにまとめて携帯できる
千代田袋は、画期的な商品でした。
いつもの白粉や化粧水を
小さな銀製ケースやボトルに詰め替えて、
石鹸やクリームも入れて......。
流行の髪型に仕上げ、毛筋を整えるための
髪結い道具も必需品です。
文明開化以降の近代化と
伝統的な生活様式が共存していた時代。
モダンな柄の着物をまとい、旅行を楽しむ
最先端の女性たちが愛用したアイテムです。
千代田袋 大正~昭和時代
Photo YURI MANABE