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2020.06.25
この扇は、約100年前のヨーロッパで作られました。
しなやかな羊皮紙に、グワッシュ(水彩絵具)を用いて
光の中で戯れるキューピッドたちが描かれた扇面は、
金箔でふちどられています。
扇面を支える骨部分には、真珠母貝が使用されていて
光にかざすとオーロラのような色の変化を楽しめます。
贅沢な素材を使い、扇職人の手によって
丁寧に作られたこの扇は、婚礼用のものです。
中心部分にいるキューピッドは黄金の矢を放っており、
その矢に射られた人間は恋に落ちると伝えられています。
扇の骨には、金色の繊細な装飾が施されていて、
愛の矢や矢筒などがちりばめられているのがわかります。
1840年、イギリスのヴィクトリア妃が純白のウェディングドレスを着用して以来
「白」は花嫁のよそおいの色として定着しました。
この扇も、白いドレスをまとった花嫁を美しく彩ったことでしょう。
キューピッドたちが祝福する、
幸福感にあふれた扇です。
結婚式・婚礼用の扇、1900年頃
Photo YURI MANABE