浮世絵にみる江戸美人のよそおい
アクセサリーを身につける習慣がなかったため、髪飾りは女性にとって大事なおしゃれでした。象牙、鼈甲、蒔絵などさまざまな素材に多彩な細工を施した櫛、簪、笄が黒髪を美しく飾りました。「びらびら簪」は、細い鎖、花や蝶などを形どった金属片を連ねた繊細な髪飾り。動きに合わせて揺れ、耳元で鳴る金属音が魅力でした。
×
×
×
櫛の中央には金蒔絵で家紋が描かれています。装飾を省いた品のよい意匠は、武家階級の女性が挿したものかもしれません。
×
真っ赤な鬼灯の実に珊瑚がはめ込まれており、よく使いこまれたのか象牙の色が変化しています。消えかかっていますが「可交斎」という銘があり、これは江戸末期に印籠師として名を残した人物です。
×
×
貝桶は貝合わせの貝を入れる桶で、江戸時代以降は嫁入り道具のひとつとされました。吉祥文様として描かれたようです。
×
雪輪の内側には、花の王といわれた牡丹が、書物の内側には波に千鳥が描かれています。赤い部分は俗に「柳川」といわれる技法を用いています。
×
『源氏物語 第十二帖』の源氏が京から須磨に退去したところを描いたのでしょうか。赤い部分に「柳川」といわれる技法を使った櫛です。
×
珊瑚を使った花飾りを簪につながるようにあしらった鼈甲櫛。髪に挿すと立体的に浮き上がりよく映えたことでしょう。
×
鼈甲は黒斑が入っていないものが高価でした。紐は簡単に落ちないようにと髷の根の部分に結んだのでしょう。
×
銘:如眞。二重唐草の中に想像上の動物で龍の一種、雨龍が描かれています。角がなく黄みを含んだ蒼色で尾が短く、蜥蜴に似ているとされています。
×
×
富士山を中央に右に芝浦沖、左に浅草の金龍山(浅草寺)が描かれ、裏には日本橋と蔵前、上野の寛永寺も描かれています。その時の気分によって表裏使い分けられる楽しい模様です。
×
櫛の峰から表面にかけて「捨両・後藤・花押」を墨書した元禄大判の意匠が施されています。大判は楕円形の大型金貨で、天正16年(1588)以後江戸末期まで通用しました。
×
珊瑚入りの玉簪に三味線、裏には「玉川の水のさらせし雪のはだ」と書かれています。粋筋の女性が好みそうな取り合わせです。
×
正面から見た十六弁の菊花と五七の桐は皇室の紋章と同じです。高貴な女性が身につけていたものかもしれません。
×
海の色を思わせる木地の両面に波千鳥模様が描かれています。
×
黒地に赤漆で桜を散らしている絵柄です。髪に挿すと、立体的に描かれた桜が浮かび上がって華やかな感じがします。
×
斑のところを蒔絵で隠し、露のように見せて桜を散らしています。華やかな絵柄の櫛笄です。
×
松葉、紅葉、銀杏などがちりばめられ、流行や髪型に関係なく挿せる模様です。
×
櫛巻の時、髷に巻きつけるように挿した櫛でしょうか。髷の根を取らずに、櫛二枚を使って結い上げる、粋筋の女性や既婚女性が結った髪型です。
×
先端に耳かきのついたもので、簪の先には鞘がついています。笄の役目もしたのでしょう。髪から抜けないようになっています。
×
団扇型の簪は現代までかなり多く残っています。少女から年配の女性まで幅広く身につけたようです。
×
天和~貞享頃までは鶴の脛骨で作った笄は最上品といわれたそうですが、その後になると年配の女性が用いるようになったといいます。元文頃には馬の骨を鶴のように誂えたようです。
×
天和~貞享頃までは鶴の脛骨で作った笄は最上品といわれたそうですが、その後になると年配の女性が用いるようになったといいます。元文頃には馬の骨を鶴のように誂えたようです。
×
3つの取り合わせにはどんな意味があるのでしょうか。芸者などが使っていたものかもしれません。印籠の部分が少し動くようになっています。
×
吉祥文様の松竹梅から下がった小さな珊瑚が美しい円を描いています。婚礼などで花嫁を飾ったのかもしれません。
×
×
×
第一章化粧の情景
第二章髪化粧の情景
第三章遊女のよそおい
第四章江戸女のよそおい
第五章花嫁のよそおい
第六章江戸名所百人美女
第七章化粧道具
第八章婚礼化粧道具
第九章紅化粧
第十章白粉化粧
第十一章眉化粧
第十二章髪飾り