浮世絵にみる江戸美人のよそおい
浮世絵には、遊女に限らず、身分、階級の異なる女性たちの姿がいきいきと描かれています。浮世絵は、よそおいの全体像(コーディネート)やルール、こだわりを今に伝える証言者でもあり、武家、町人、芸者、町娘、母親など、さまざまな女性たちを、衣服や身の回りの小道具の格式などで巧みに描き分けています。
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歌川豊国画。鏡の前でポーズを作っているのは芝三田の局見世(最下級の遊女がいる店)の女郎です。前髪を短く切り、大きな貝髷に結っています。最下級の遊女といっても教養のある女はいたということで「掃き溜めに鶴」になぞらえ、はきだめに「於松」を当てています。
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歌川豊国画。御殿女中たちの花見の様子ですが、真ん中の揚帽子を被り、お歯黒に眉無しの女性は御殿女中特有の髪型、片外しを結い、黒地に沢潟模様の打掛を着ています。その隣は姫君でしょうか。桜や牡丹の豪華な衣装に、髪には大きな花簪をつけています。
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歌川国貞画。盥に前かがみになっている女性は上半身裸で襟あたりを洗ってもらっています。髪型は吹輪、お歯黒が見え、武家階級の既婚女性でしょうか。糠袋を手に持つ若い娘は島田髷に花簪とびらびら簪を挿しています。道具類は黒漆に葵の絵が描かれています。
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歌川豊国画。正月初卯の日詣で賑わう亀戸天神にお参りする3人の女性。向かって左は既婚女性、右は芸者のようです。中央は武家の娘でしょうか、着物には「よきことをきく」という判じ物が描かれています。
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一勇斎国芳画。「左り」というのは「左党」と同じで酒好きな人、ということ。今にもほどけそうな髪型は「じれった結び」、生え際の髪もほつれています。右手の杯を左に寄せ、もう飲めないという仕草。品がいいとはいえないもののどこか愛敬のある表情です。
第一章化粧の情景
第二章髪化粧の情景
第三章遊女のよそおい
第四章江戸女のよそおい
第五章花嫁のよそおい
第六章江戸名所百人美女
第七章化粧道具
第八章婚礼化粧道具
第九章紅化粧
第十章白粉化粧
第十一章眉化粧
第十二章髪飾り