浮世絵にみる江戸美人のよそおい
江戸時代のファッションリーダーといえば、遊女と歌舞伎役者。とくに高位の遊女は、自分の美しさや格式を誇り、妍を競うため、常に先端モード(ファッション)のよそおいをしていました。遊女特有の大きく結い上げた兵庫髷に、高価で貴重な鼈甲の簪をたくさん挿し、豪華な文様、刺繍の衣装をまとった姿で描かれています。
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一筆菴英泉画。丸海老屋は江戸町一丁目にあった妓楼の名前。根の高い島田髷に髷より大きい櫛、牡丹の両天簪、蔦の形の簪が3対と髷のところに縦に2本、前髪のところにも簪が2対、合計12本挿しています。引込新造のおたかは娘気分がまだ残る見習いの遊女のようです。
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歌川豊国画。吉原遊郭は明暦の大火後、浅草へ移りますが、その江戸町一丁目の玉屋という妓楼が抱えていた3人の遊女の図です。中央の花紫は横兵庫、朝妻と誰袖は島田髷。髪飾りは鼈甲の二枚櫛、笄、簪は前挿しが4対、後ろ挿しが4対ですが、花紫だけ一対多いのです。
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歌川豊国画。口に御簾紙をくわえ、蜻蛉のついた簪に天神髷を結っている遊女は、次の客のところに移動するところでしょうか。こま絵は、寅の刻(午前3~5時)頃、不寝番が拍子木を叩いて火の用心と時を知らせる様子。遊女は寝る間もなく働いたのでしょう。
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一勇斎国芳画。高尾(浮世絵には高雄と記載)は、三浦屋四郎左衛門抱えの最高位の遊女です。高尾の名は代々継承されたといいます。座敷で天秤に乗っているのは、伊達綱宗が高尾を身請けする際、体重と同じだけの小判を支払ったという場面。千両箱も見えています。
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永嶋孟斎(歌川芳虎)画。体重と同じだけの小判を乗せたという高尾の身請けの場面ですが、全体的に赤いのは、明治の錦絵の特徴であるアニリン染料の赤色で遊郭の華やかさを表現しています。天井の照明もシャンデリアのようで、題材は江戸前期でも設定は江戸末期から明治でしょうか。
第一章化粧の情景
第二章髪化粧の情景
第三章遊女のよそおい
第四章江戸女のよそおい
第五章花嫁のよそおい
第六章江戸名所百人美女
第七章化粧道具
第八章婚礼化粧道具
第九章紅化粧
第十章白粉化粧
第十一章眉化粧
第十二章髪飾り