西洋の扇
扇製作にはさまざまな素材が用いられました。象牙は軽く強くしなやかで、細工がしやすく、彩色、象嵌も施しやすかったといいます。精密な細工は、18世紀大量に輸入された中国の象牙製透かし彫り扇の美しさに触発されたもの。この他、レースや鼈甲、真珠母貝などが扇の素材として好まれました。
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新ゴシック様式の小突塔風の骨に金彩を施しています。中央には羊飼いが羊の群れを監視しながら笛を吹いています。リボンは、ピンクの薔薇をあしらった白い絹。裏は羊の群れ。
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扇の縁から要に向かって、円形がだんだん小さくなっていく文様は、1815年頃流行したようです。
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「V.BALBOA、1882」のサイン入り。書店の店頭で本を読む女性、白いレースのスカーフ「マンティーラ」をかぶった女性、陳列台の本を吟味する男性などが描かれています。
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「J. Stud. A. V. Nubka」のサイン入り。白い古代風ドレスに大きなイヤリングをつけた褐色の髪の女性。記念に作られたものと思われます。
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旅人カップルの女性はロココの盛装風の青いドレスを着ており、村の祭典に出向くところでしょうか。後ろの教会あたりに男女2組が、裏面には花枠と旅人が描かれています。
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貴族らしい女性の横で、帽子を取って挨拶する男性に2人の子供の姿も。門が見え、城の周辺で憩う風景のようです。親骨にはフルートを奏でる羊飼いが施されています。裏面は杖をついて礼拝堂を通る男性の姿です。
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中央にはロココスタイルの盛装の女性に愛を告白する男性。男女とも流行の真っ赤な頬紅をつけ、かつらには灰色の髪粉をふりかけています。かつらの下の地毛も見えます。雲にすわるキューピッドは花輪を差し出していて、二人の愛を認めた証です。
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骨組みはイギリス風ですが、鳥、蝶を織り交ぜた花文様はドイツで流行したものです。薔薇、丸葉朝顔、鳥、蝶など華やかな文様。透かし彫りに花鳥装飾の象牙製扇はロマン主義の時代頃に人気を集めました。
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扇面全体は、青、赤、金色のゴシック様式の建物に囲まれ、中央はフランク王国の国教をキリスト教にする王令を発するクロビスの戴冠式。骨の冠文様は。皇帝の象徴である月桂樹の花冠にみえ、親骨の文様は国王を象徴する百合と思われます。裏はコルヌミューズ、金葉と青い薔薇文様。
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中央部には、椅子にもたれる男女、親骨には女性像が施されています。大きさから19世紀初頭のものと思われます。
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左右の枠には城と東屋の風景画、中央の枠には、羊飼い風の帽子をかぶり果物籠を持った女性と、杖と帽子を手にした羊飼いが、花を頭に載せた子どもが通るのを眺める様子が描かれています。
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ロココ様式の中国趣味的な文様をあしらった扇。図柄は収穫の憩いの時。中央には鎌を持つ農夫が、革袋の水を飲む男性を指差し、水差しと皿を持つ女性に話しかけているようです。白い布をかけた机の上には食べ物が見え、男性にふるまうところでしょうか。牡丹や桜も描かれています。
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バロック様式の4層の文様からなり、リボンの上下はアカンサスの葉文様で仕切られてします。親骨には戦いの女神ミネルヴァの頭部が彫刻されています。当時、ドイツ、オーストリアでは、彫刻を施した象牙のブリゼ式扇が多く製作されました。
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扇面は表裏2枚貼り。中国趣味の鳥紫蘭文様で、庭園で書を読む男性と傍らの女性、左には花を生けた花瓶を眺める男性の姿が描かれています。右には水仙などの植物が大きく配されています。
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庭園で花の香を楽しむ女性と花を見る恋人らしき男性は嗅覚と視覚を、左の雄山羊の側で葡萄を食べる女性は味覚を、右の噴水の奥で抱き合う恋人たちは触覚を、コルヌミューズやリュート風の楽器が聴覚を表現しています。
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爆発的に人気を得た詩集『オシアンの詩』からの引用。この頃は、扇面は表中裏の3層になっていることが多く、湖畔の月明り、夢見心地の若い娘は空想の中の人物に囲まれています。妖精、蝸牛、黄金虫、女性を守っている4人の戦士などです。
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無地の扇面。親骨は劇用仮面、矢筒と弓矢、楽器の花輪模様です。房つきは19世紀に造られるようになったもので、紐を腕に二重に巻いて下げていました。
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格子窓から外を眺める女性とじょうろを持つ女性が描かれています。後ろ側の召使いらしい女性も、バッスルスタイルのドレスを着ています。
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中央は、弓矢を持つキューピッドが「HOTEL DE AMOUR」の文字の祭壇に立っています。祭壇周辺には、愛を告げる男女、見守る男女が見られます。
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M. De.Launのサイン入り。川沿いの木陰で古代風の服装の男とキューピッドがブランコに乗っています。大量の扇面製作をしていたというローロンスのこの絵は扇面画として頻繁に使用されました。
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持ち主は「M.E.」。中心に薔薇、羽根形唐草文のモチーフ、花壇文様を配しています。
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デュシェスレース(ニードル・ポイントレースのモチーフをあしらったボビンレース)で丸葉朝顔と薔薇をあしらっています。このレースは、最高級のベルギーのブルージュ製でフランスへ多く輸出されたといいます。
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扇面のグワッシュ画を担当したマリー・ロディーグは扇専門の画家。高級なボビンレースのシャンティレースに、楽譜、指揮棒を持つ妖精、ピンクのヴェールをまとってヴァイオリンを演奏する女性は、音楽の女神ミューズを連想させます。アールヌーヴォー様式の特徴の2つのメダイヨン、華麗な花をあしらっています。
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複数の羽根を集めたマルケトリ技法。虹雉の羽根、鼈甲に似せたセルロイドともに当時は高価な素材でした。
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複数の羽根を集めたマルケトリ技法。円形に開き、小さく折りたためるので、バッグに入れて携帯できました。1905~1914年頃にかけて流行しました。
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駝鳥の羽根扇は、ベルエポック時代に人気がありました。
第一章神話を描いた扇
第二章グランドツアーの扇
第三章中国の扇
第四章デュヴェルロワの扇、マルタンの扇
第五章広告用の扇
第六章ファッション誌にみる扇の広告
第七章シーンに合わせた扇
第八章素材さまざま
第九章ファッションの変遷と扇