美しさへの挑戦
絵本や浮世絵などに描かれている化粧や結髪の様子から当時のよそおいを察することができます。桜、菊、松竹梅など吉祥模様が描かれた振袖、王朝風の華麗な小袖など、よそおう女性たちの心を表しているようです。小物として欠かせなかったのが箱迫(はこせこ)や懐紙入れ。懐中鏡などを収めた袋物も凝ったつくりでした。
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三代歌川豊国画、歌川国久(こま絵)。打掛の女性は高位の御殿女中。埃よけの揚帽子に片外しを結っています。身分の高い御殿女中は一生奉公(里帰りできない)ため、嫁いだ時と同様にお歯黒をして眉を剃ったのです。しごき帯、重ね草履を身に着け、増上寺への代参でしょうか。
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刺繍を中心に摺匹田を加えて、伝統的な蓬莱模様の松竹梅鶴亀を表現しています。菊花のモチーフには化学染料を用いたと考えられ、現在も鮮やかな色合いを保っています。
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萌黄色の縮緬地に刺繍で菊や桜、梅の花と唐扇が描かれた華やかな振袖です。おそらく富裕な家の若い女性が着用したと考えられます。
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紅白梅に宝尽くしが大胆に刺繍された箱迫です。箱迫とは、懐紙入れから発達したもので、現代でも七五三や結婚式で花嫁の胸元を美しく飾っています。
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牡丹と蝶が金糸で立体的に刺繍された豪華な箱迫です。牡丹と蝶の組み合わせは、昔から好まれた図柄でした。
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懐紙入れには、懐紙のほかに鏡や楊枝、お金なども入れていたようです。もとの持ち主が入れたのでしょうか、この懐紙入れには、文政4年(1821)と書かれた火傷よけのまじないのお札が入っていました。
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携帯用化粧道具の一種。ガラス鏡が取りつけられ小さな鏡台のようになります。中には蓑虫の巣で作られた小さな箱があり、そこに紅板、紅筆、刷毛などが収納されています。
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金糸で織られた豪華な定家文庫です。鏡、懐紙入れ、裁縫セットなどが収納されています。旅行などに持って行ったのでしょう。身だしなみに必要な道具がそろえられています。
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女性用の小さな姫印籠です。薬などを入れたのでしょう。持っているだけで楽しくなるような小物です。
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古くなった着物の端切れで作ったものでしょう。御殿女中などは身の回りの小道具、たとえば琴の爪や数珠などを入れるのに使ったようです。
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一見すると普通のハンドバッグですが、真ん中の取っ手を引いて箱を開けると香水調合セットが収納されています。持ち歩いて使うというよりは、一式効率的に収め、ディスプレイするためのものかもしれません。
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コンパクトにまとめられた化粧道具セットで、鏡から紅、白粉、櫛、剃刀、小さな香水瓶まで入っています。小間物を扱っている店で販売されていたようで、明治時代の『風俗画報』などにもよく広告が出ています。
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第一章化粧道具
第二章近代の化粧 明治~大正時代
第三章コンパクト
第四章近代の化粧 昭和時代
第五章鏡と鏡台の変遷
第六章江戸時代の髪型と髪飾り
第七章近代の髪型と髪飾り
第八章装う
第九章千代田の大奥