美しさへの挑戦
江戸時代を通して基本となった髷は、島田髷、兵庫髷、勝山髷、笄髷(こうがいまげ)の4種で、身分や階級、年齢や未・既婚で髪型がそれぞれ違っていました。江戸中期には、髷の形ではなく、鴎髱、鶺鴒髱などの髱(たぼ・またはつと)の形、燈籠鬢(とうろうびん)などの鬢の形によるアレンジが流行していきます。
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寛永の始め頃、唐輪髷が簡略化されて生まれた髷です。摂津兵庫の遊女が結い始めたともいわれます。太刀の兵庫鎖、兵庫桶(片手桶)に似ているからという説もあります。
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日本髪の代表的な髪型のひとつで、江戸時代初期の若衆髷が変化したものです。東海道島田宿の遊女から始まったといわれています。髱は鴎髱です。
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浮世絵師、鈴木春信の描いた浮世絵をもとにして作られた髪型です。髱は鶺鴒髱とよばれますが、着物の襟につかないように、髱挿しを入れ、ぐっと上に吊り上げていました。
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左右に大きく張り出している鬢は、向こう側が透けて見えること、また形が似ていることから燈籠鬢と名付けられています。鬢を張るためには鯨の髭や鼈甲、針金などが使われました。
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京阪(京都・大阪)の既婚者が結う髪型で、髷に橋をかけ、髷止めに固定しています。江戸の既婚者が結った丸髷とは雰囲気も違って、どこか上品な感じがします。
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既婚女性が結った髪型です。年齢によって髷の大きさ、厚みなどがさまざまで、若い人は大きくふっくらと、年を重ねるにつれて小さくなっていきました。
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公家・武家など上流階級の女性は、儀式の際、伝統を守って垂髪にしました。前髪と鬢の毛を大きく張ったおすべらかしは、江戸時代後期になって結われるようになりましたが、これは燈籠鬢の影響かといわれています。
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おすべらかしは、公家や武家など上流階級の正式な場で結われた髪型です。さまざまな道具が必要でしたが、中でもヘラつき筋立ては、平らなハート型を作るのに欠かせないものでした。
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貝桶は貝合わせの貝を入れる桶で、江戸時代以降は嫁入り道具のひとつとされました。吉祥文様として描かれたようです。
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漆で抽象的に描かれた花模様と思われます。江戸時代にしては珍しい意匠ですが、小さな珊瑚がかわいらしさを添えています。
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赤漆を塗った上に葵を描いた櫛。鮮やかな色目ながら、落ち着いた模様になっているところから、若い既婚女性が身につけたのかもしれません。
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重量感のある大きな鼈甲櫛で、よく見ると枝垂れ桜が描かれています。若い娘が大きな髷を結った時に挿したものでしょうか。
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櫛巻の時、髷に巻きつけるように挿した櫛でしょうか。髷の根を取らずに、櫛二枚を使って結い上げる、粋筋の女性や既婚女性が結った髪型です。
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いわゆる白鼈甲でつくられた櫛・笄。ふつう鼈甲には黒い斑が入っていますが、それを取り除いて作ったものです。美しい笄を挿し、勝山髷などを結ったのでしょうか。
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黒斑をそのまま生かして作った櫛です。浮世絵師の鳥居清長が好んでこのような髪飾りを描いています。当時の流行を表現していたのかもしれません。
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幕末から明治時代になってくると、笄が少し短くなってきます。絵柄は梅に鶯というよく見られる模様ですが、金蒔絵で豪華さを出しています。
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菊の花に戯れる小鳥を描いた金蒔絵の櫛・笄です。丸髷に使えば、前髪の上や髷の両端から珊瑚の朱色が見えて、華やかな印象だったことでしょう。
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吉祥文様の松竹梅から下がった小さな珊瑚が美しい円を描いています。婚礼などで花嫁を飾ったのかもしれません。
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結ばれた葵の葉から下がったびらびら鎖の先には銀の鴛鴦がついています。若い女性のものでしょうか。職人の遊び心が表現されています。
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牡丹に蝶が配され、歩くと蝶が上下に動くような仕掛けになっています。職人の腕の見せどころだったのでしょう。今でもその高い技術に驚かされます。
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桜花を立体的に模った簪で、笄のように髷の左右から挿したものかもしれません。小さな桜ですが、黒髪に映え、存在感が出てきます。
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透かし彫りの平打簪は後挿しでしょうか。このような平打は武家の女性たちも愛用したようです。
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丁寧な仕事ぶりが伝わってくるような菊花簪です。地味な中にも品のよさが感じられます。
第一章化粧道具
第二章近代の化粧 明治~大正時代
第三章コンパクト
第四章近代の化粧 昭和時代
第五章鏡と鏡台の変遷
第六章江戸時代の髪型と髪飾り
第七章近代の髪型と髪飾り
第八章装う
第九章千代田の大奥