祝いのよそほい
松竹梅、鶴亀、獅子、蝶などの縁起のよい動植物の図柄や「高砂」「寿」といった文字は「吉祥文様」と呼ばれ、女性の衣装や髪飾りなどの装飾品、身のまわりの品々に描かれてきました。南天は「難を転ずる」の意から身分や階級を問わず好まれ、日々の化粧で必ず使う柄鏡(えかがみ)に多く描かれました。
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鏡や鏡箱には吉祥文様が多く描かれました。黒漆に金蒔絵で松竹梅のおめでたい絵柄が表現されています。
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南天は「難を転じる」の意から、柄鏡に多く用いられた図柄です。この鏡には、さらに悪い夢を喰い邪気を払うとされた空想上の動物の獏も描かれています。
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龍門は登龍門のことで、立身出世をあらわしています。
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高砂(兵庫県)は古来より播磨の重要な港で、高砂神社にある相生の松もよく知られています。また謡曲「高砂」は、祝言曲として、結婚式などの祝儀の席でよくうたわれます。
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菊水は中国河南省内郷県にある白河の支流を指しているようです。この川の崖上にある菊の露がしたたり落ち、これを飲んだ者はみな長生きしたという言い伝えにあやかった図案かもしれません。
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扇は「末広」ともいわれ、先に向かって広がっていく形が次第に栄えていく様子と重なり、吉祥文様として好まれました。松や梅そして鶯が蒔絵で描かれ、『源氏物語』初音の巻を想起させる雅やかな香箱です。
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軍配は、軍陣で武将が采配のかわりに用いた指揮用の団扇です。相撲で行司の持ち物としてして現在も目にすることができます。
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貝桶は貝合わせの貝を入れる桶で、江戸時代以降は嫁入り道具のひとつとされました。吉祥文様として描かれたようです。
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吉祥文様の松竹梅から下がった小さな珊瑚が美しい円を描いています。婚礼などで花嫁を飾ったのかもしれません。
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京都紅清製。夫婦・男女が、仲よく常に連れだっているさまを「鴛鴦」といいます。これはその雌雄の鴛鴦をかたどった容器に紅、白粉を入れて販売した商品です。
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国周(豊原国周)画。追い羽根と助六の羽子板を持った若い娘。結綿に結った髪には宝尽くし模様の櫛を挿しています。
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国周(豊原国周)画。菊模様の着物に折り鶴の紋、胸元には懐紙入れが見えます。頭には華やかな牡丹の簪。恥じらうように扇で顔を隠す姿は、ちょうどお見合いの最中なのかもしれません。
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国周(豊原国周)画。七宝繋ぎの着物に追いかけ扇の紋。奴島田に結った髪には、ふくら雀の簪のほかに鳥の飾りがついた大ぶりの簪も挿しています。
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国周(豊原国周)画。蝙蝠 (こうもり)のついた簪を挿した娘は、縁談が整ったところなのでしょうか、縄で繋いだ鰹節を手にしています。中国では、「蝠」が「福」の音に通じることから、吉祥文として親しまれていました。
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国周(豊原国周)画。丸髷から既婚女性のようですが、まだ眉があるので新婚なのでしょうか。手前にお歯黒道具が見えているので、お歯黒をつけているところなのかもしれません。
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歌川豊国画。正月初卯の日詣で賑わう亀戸天神にお参りする3人の女性。向かって左は既婚女性、右は芸者のようです。中央は武家の娘でしょうか、着物には「よきことをきく」という判じ物が描かれています。
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歌川豊国画。御殿女中たちの花見の様子ですが、真ん中の揚帽子を被り、お歯黒に眉無しの女性は御殿女中特有の髪型、片外しを結い、黒地に沢潟模様の打掛を着ています。その隣は姫君でしょうか。桜や牡丹の豪華な衣装に、髪には大きな花簪をつけています。