祝いのよそほい
大人になるための通過儀礼の習慣は世界各地にあります。日本でも奈良時代には古代中国の風習を模した男子成人の儀礼「元服」があり、江戸時代になると、結婚した女性が眉を剃り、お歯黒することも元服と呼ぶようになりました。現代では特異に見える独特な化粧も、社会から大人と認知されるための大事な儀礼だったのです。
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耳盥の下に台輪を置いて、歯を染める際に屈まなくてもよいように底上げしています。鉄漿壺に作った鉄漿水は、毎朝使う分だけ鉄漿次に入れ温めます。お歯黒は渋かったので、嗽茶碗でうがいをしました。婚礼化粧道具のお歯黒道具と比べると、蒔絵や意匠も簡素です。
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眉刷毛、袖なり、しんさし、横おしといった眉化粧に使用するヘラ類などのほかに、白粉箱、化粧香合、油桶、鬢水入れ、三つ櫛などを含んだ化粧道具一式です。つくりや装飾などから、上流階級のものと考えられます。
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元禄4年(1691)、水島卜伝が書いた『化粧眉作口伝』の写しです。眉の描き方や眉作り道具について書かれています。
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歌川豊国画。吉原遊郭の遊女たちの身支度の様子を描いた浮世絵です。中央の女性は、お歯黒の後なのか耳盥を前に、房楊枝で舌かきをしています。