はじまりの美学
伝統的な社会の中では、成人、結婚、出産など、ライフステージが大きく変化するとき「初めて行う化粧」がありました。さまざまな通過儀礼の中でも、特に既婚女性を象徴する化粧である「剃り眉と丸髷」に焦点を当て、化粧のもつ社会的な意味や、人生に訪れる「初化粧」への思いや不安、ためらいを掘り下げます。
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眉刷毛、袖なり、しんさし、横おしといった眉化粧に使用するヘラ類などのほかに、白粉箱、化粧香合、油桶、鬢水入れ、三つ櫛などを含んだ化粧道具一式です。つくりや装飾などから、上流階級のものと考えられます。
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五渡亭国貞画
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三代歌川豊国、歌川国久(こま絵)。手で眉を吊り上げ、剃刀で顔を剃っているのは料理屋の女でしょうか。髪型は潰し島田で絞りの手絡をしています。脇には新品の「花の露」があり、これから開封するのかもしれません。白粉ののりつきをよくするための手入れのシーンです。
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算木崩し模様の着物、丸髷に結い上げた髪を鮮やかな櫛笄で飾り、眉を剃って美しく装う若妻風の女性。胸に抱いた幼子には宝尽くし模様を散りばめた胞衣着を着せ掛けており、お宮参りでしょうか。後ろには風呂敷を背負った丁稚の姿も見えます。
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天神髷に結い上げた若い女性は、着物の内に生まれたばかりの子どもを抱いています。出産した後、眉を落とすというのが女性の通過儀礼のひとつでした。おそらく剃りたてなのでしょう、剃り跡が青く見え、母親になったばかりの女性の美しさがあふれます。
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楊洲周延画。正月三日将軍と御台所の年頭のご祝儀が終わった後、御座の間に注連飾りをした白木造りの盥と湯桶を用意。中臈は湯桶を持ち、御台所はそれを受ける真似をして「君が代は」と唱えます。これはそのお清めの儀式が描かれています。
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楊洲周延画。元旦は儀式や衣服のお召替えがあったので、時間がずれることもあったらしく、二度目の御飯(昼食とはいわず)、三度目の御飯(夕食ともいわず)といったそうです。三が日は三度ともお赤飯でした。
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浮世絵師、鈴木春信の描いた浮世絵をもとにして作られた髪型です。髱は鶺鴒髱と呼ばれますが、着物の襟につかないように、髱差しを入れ、ぐっと上に吊り上げていました。
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左右に大きく張り出している鬢は、向こう側が透けて見えること、また形が似ていることから燈籠鬢と名付けられています。鬢を張るためには鯨の髭や鼈甲、針金などが使われました。
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既婚女性が結った髪型です。年齢によって髷の大きさ、厚みなどがさまざまで、若い人は大きくふっくらと、年を重ねるにつれて小さくなっていきました。