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2019.11.28
普段のヘアスタイルはゆるふわに、どこか無雑作に崩すのがトレンド。けれども、着物の時はシャンと結い上げた髪が"粋"に思えます。そこで今回のキーワードは髪を結うこと、「結髪」です。
前回お話しした、髪を結いはじめた頃の「下げ髪」や「玉結び」に続いて登場するのが、こうした過渡期の髪型から一歩進んだ「唐輪髷(からわまげ)」。日本髪の原形といわれています。安土桃山時代の天正頃(1573~92)に遊女たちが結いはじめ、中国(=唐)の女性の髷を真似たところから名付けられました。
《葉うた虎之巻》(部分) 豊原国周 文久頃(1861~1864)
扱うのが大変な長い髪を結ってもらっている。ちなみに結髪師という職業が盛んになったのは江戸時代に入ってからのこと。
唐輪髷が登場する前までは、髪を結ったとはいえ下の方に下ろしていたので、高い位置で結い上げたアップスタイルは初めてのこと、当時としてはひと際目立った斬新なヘアスタイルだったのです。そしてこの結髪こそ、結った髪を折り曲げて作られる部分、髷(まげ)の誕生でした。
この唐輪髷をベースに、江戸時代になると四つの結髪が誕生していきます。
兵庫髷(ひょうごまげ)、島田髷(しまだまげ)、勝山髷(かつやままげ)、笄髷(こうがいまげ)。この四つは見た目の違いもさることながら、身分や職業、未既婚など、誰がその髷を結うのかも異なりました。ということは、結髪をみれば江戸女性のプロフィールがある程度わかったということです。これから連載でお話していく結髪の特徴や髷の話、豆知識としていて覚えていると、時代劇を観ていてもきっと発見がありますよ。
唐輪髷 天正(1573~1592)
近世のアップスタイル。
※このコンテンツは2015 年から2018 年にポーラ文化研究所Web サイトにて連載していた「やさしい日本髪の歴史」を2019 年から2023 年まで一部改訂再掲載したものです。