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2022.12.22
平安時代の「垂髪」から明治時代の「束髪」へ。長い歴史の中で、社会や生活スタイルの移り変わりと共に、女性の髪型は変化してきました。ですが、ずっと変わらなかったものがあります。それは「直毛の長い黒髪=美しい」という美意識。これに大きな風穴をあけたのが、ウェーブという革新的な技術の登場でした。
耳隠し
19世紀後半、フランス人のマルセル・グラトーが鏝(こて)を使って髪にウェーブをつける技術を考案。「マルセル・ウェーブ」は世界的な流行となります。日本では、大正10年頃にウェーブさせた髪で耳を覆うようにまとめた「耳隠し」という髪型が登場。画期的でモダン、和服にも洋服にも似合うヘアスタイルとして、たちまち人気を集めました。
日本髪を洋風にアレンジした束髪と、ウェーブをつけて結う洋髪。2つの髪型の大きな違いは、直毛にウェーブをつけたという技術的なものだけではありません。旧来の「直毛の長い黒髪こそ美しい」という固定概念から、「髪型は自由に楽しむもの」という考え方に一歩進んだ、価値観の変化でもありました。
《中古諸名家美人競 後編 巻十一 寛齊筆紫式部ノ図》 福井月斎 縮図 明治時代(国文学研究資料館撮影)
※このコンテンツは2015 年から2018 年にポーラ文化研究所Web サイトにて連載していた「やさしい日本髪の歴史」を2019 年から2023 年まで一部改訂再掲載したものです。