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2022.10.27
髪飾りは黒髪を引き立てるアクセントとして、日本髪には欠かせない存在です。明治時代になり、「束髪」という新しい髪型が登場するなか、髪飾りはどう変化したのでしょうか?
明治時代に流行した髪飾りといえば、珊瑚珠の根掛けです。根掛けは髪を結ぶひも「元結(もとゆい)」の一種で、髷(まげ)の根元を結び飾るもの。珊瑚や貝、真珠、瑪瑙(めのう)などを数珠状につなげたものが用いられ、独特の風合いを持つ珊瑚は特に人気を集めています。
銀杏返し
赤い珊瑚珠の根掛けが、髷の根元を彩っている。
さらに、画期的な新素材"セルロイド"が登場。明治22年頃からセルロイド製髪飾りの国内生産が始まります。ニトロセルロースに樟脳(しょうのう)を混合したセルロイドは、人類初のプラスティック。美しい光沢に加え、珊瑚や鼈甲(べっこう)などの色柄を再現できる点も魅力でした。加工しやすく安価なセルロイド製髪飾りは、高価な珊瑚や鼈甲製の代用品として、多くの女性たちに使われました。
新時代の変化には、女学生に流行した「マガレイト」などに合う、幅の広いリボンや造花を使った髪飾りの登場も見逃せません。新素材の髪飾りや、日本髪用以外のものが登場したおかげで、特に若い女性たちのヘアアクセサリーの選択肢はグッと広がりました。
《シダ模様セルロイド洋髪簪》 大正時代~昭和時代
鼈甲を模した洋髪用の簪。アール・ヌーヴォー風な模様も西洋の雰囲気を感じさせる。
※このコンテンツは2015 年から2018 年にポーラ文化研究所Web サイトにて連載していた「やさしい日本髪の歴史」を2019 年から2023 年まで一部改訂再掲載したものです。