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2021.12.23
身分ごとに見てきた髪型とファッション。庶民、武家、公家ときて、締めくくりは遊女です。浮世絵に描かれた高位の遊女は、江戸時代のよそおいに詳しくなくてもひと目で見分けがつくほどの派手さ。武家の上品な華やかさとは違った、競うような艶やかさが見事です。
《風流七小町 関寺小町 鶴屋内大淀》 菊川英山 文化9年(1812)(国文学研究資料館撮影)
上の浮世絵で簪(かんざし)に手をかけているのは、鶴屋内の大淀という最高位の遊女。髪飾りも着物も、まさに「絢爛豪華」という言葉がぴったりです。
髪は未婚女性の定番である島田髷(しまだまげ)に結い、べっ甲の櫛を二枚。このような二枚櫛(時には三枚櫛も!)は遊女特有の飾り方で、一枚は自分のため、他は客の髪を梳くためというのが、いつの間にか飾りになったということのようです。
さらにべっ甲製の笄に、簪を六本も挿しています。まるで仏像の後光のようですね。べっ甲の髪飾りはとても高価で、庶民の女性たちにとっては憧れの高級アクセサリー。べっ甲の櫛や簪を重ね付けできるのは、地位の高さを示すしるしなのです。
着物は水草の一種、花勝見と菊模様、それに格子に花菱模様の帯を前でだらりと締めています。着崩した姿には、あか抜けた雰囲気が漂いますね。
遊女にとって、着飾ることは単なるおしゃれではありません。互いを格付けし合い、更にはステータスの高さを誇示するための手段のひとつとして着飾ったのです。一見して豪華なよそおいですが、その内には、遊女として生きていく覚悟を持った女性の「凄み」が秘められています。
《風流七小町 関寺小町 鶴屋内大淀》(部分) 菊川英山 文化9年(1812)(国文学研究資料館撮影)
※このコンテンツは2015 年から2018 年にポーラ文化研究所Web サイトにて連載していた「やさしい日本髪の歴史」を2019 年から2023 年まで一部改訂再掲載したものです。