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2019.06.13
平安時代に基礎ができ、江戸時代まで続いた日本の伝統化粧が「赤」「白」「黒」の3色を用いたメークです。これまで「お化粧ヒストリー」で取り上げた「白粉」(白)や「お歯黒」「眉化粧」(黒)に続き、今回は3色のなかでもっとも華やかな色である「赤」の紅化粧についてご紹介します。
紅花を原料として流通していた紅は、口紅としてのほかに頬紅、爪紅としても使用されました。しかし、紅花から抽出できる紅はごくわずかだったため、「紅一匁、金一匁」(べにいちもんめ、きんいちもんめ)と金にも並べて呼ばれるほど高価なもの。そのため、江戸時代の女性たちが紅をつけるときは唇いっぱいにつけるのではなく、小さく描いていたといいます。
ところで、浮世絵を見ていると下唇だけ緑色に塗っている女性が描かれていることがあります。これは江戸時代後期に流行したメーク「笹色紅」。遊女の見栄が流行の発端といわれているこのメーク方法、紅は重ね塗りをすることで緑色に発色することからこう呼ばれました。
化粧の色使いが少ない時代において、華やかさを演出する役割を担っていた紅。その紅を使って工夫しながらメークを楽しんでいた江戸時代の女性たちの姿が浮世絵にも多く描かれているのです。
《浮世四十八手 夜をふかして朝寝の手》 渓斎英泉 文政4~5年頃(1821~1822)
朝寝坊をして準備中の左側の女性と、すでに身支度を終えている右の女性。後者は笹紅色のメークをしている。