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2019.01.17
化粧をすることが一般に広がった江戸時代。
肌を整える化粧水には、今と同じように大ヒットする市販品もありましたが、当時の女性たちは化粧水の手作りにもチャレンジ。
例えば、江戸時代後期に書かれた美容本『都風俗化粧伝(みやこふうぞくけわいでん)』には、「花の露のとりよう」として、ノイバラ(植物)の花から作る化粧水を紹介しています。
まず、蘭引(らんびき)と呼ばれる蒸留器に、水と花びらを入れて火にかけ、蒸します。蒸された花の成分を含んだ蒸気が、蒸留器の中で冷やされ、水分として溜まったものを化粧水として使いました。
この花の露、実は女子にはうれしい万能化粧水だった様子。前出の美容本には、「化粧してのち、はけにて少しばかり顔にぬれば、光沢をいだし、香をよくし、きめを細かにし、顔の腫物をいやす」と複数の効能が書かれていました。
その他にも手作り化粧水には、糸瓜(へちま)の蔓(つる)を切って、切り口を下にして瓶に挿し、ぽたぽたと落ちてくる水分を化粧水として使う糸瓜水などもありました。現代からすると、なんとも気長な作業に感じますが、美肌になる自分を想像しながら、じっくり溜まるのを待つ、それもまたワクワクする楽しい時間だったのかもしれません。
《江戸名所百人美女 芝神明前》 三代歌川豊国 安政5年(1858)
鏡台の脇、足元に置かれているのは市販の「花の露」。
江戸時代後期に化粧水として人気を博した。