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2020.09.10
「ベル・エポック(よき時代)」という言葉をご存じでしょうか?1890年頃の19世紀末から1914年の第一次世界大戦開幕までの時代のことを指します。産業革命を経たフランスでは、上下水道の整備による公衆衛生の改善、交通網の発達や電話の実用化など、生活インフラが大幅に向上しました。さらにエッフェル塔の完成やパリ万国博覧会の開催など、明るい話題が続きました。
この時代、よそおいにも変化が訪れます。
1890年代、前回ご紹介したバッスルスタイルに代わって登場したのがS字型シルエットのドレスです。コルセットでウェストを細く締め、胸部と腰を強調したこのスタイルは、横から見るとS字型を描いているように見えました。
髪型では1870年代頃に大転換が生じました。マルセル・グラトーが考案した、熱したコテで髪を波打たせる「マルセル・ウェーブ」が登場したのです。それまでの膨大なたつけ毛やつけ髷が減少し、地毛にウェーブをかけ、小さな髷を頭上に作るポンパドールなどの髪型が大流行。頭頂部には羽根飾りや櫛、ヘアピンを挿して髷を固定し、華やかさを演出したほか、帽子も人気を集めます。
この時代、一世を風靡した芸術様式が「アール・ヌーヴォー」です。植物や生物の有機的な形を取り入れたこの様式に影響されてS字型シルエットのドレスが登場したと考えられています。さらにマルセル・ウェーブによる波打つ髪型も、おりしも新時代の新たな表現に寄り添うものだったといえるでしょう。
さて、では20世紀のお化粧はどうでしょうか。化粧も化学工業の発達により、新素材が開発されます。白粉、口紅、香水などは質が高いものが安価に生産されるようになり、化粧という文化も広がっていきます。この時代のお化粧については、次回以降さらに詳しくお伝えします。
次回も引き続き、20世紀のよそおいについてご紹介します。お楽しみに!
『シック・パリジャン』 1900年代