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2019.12.26
馬車に乗った二人のご婦人。髪の毛や飾りが大きすぎて、椅子を取り除いた状態で直接床に座っています。
このような風刺画が描かれるほどに一風変わったヘアスタイルが、1770年代から80年代のフランス宮廷を中心として局地的に流行しました。
前回の「お化粧ヒストリー」でご紹介した図版も、この時代のファッションを描いたものです。
流行の中心にいたのは、ファッションリーダーであるマリー=アントワネットです。
ドレスが華美になってボリュームが増したことに伴い、バランスをとって髪型も巨大化!
その高さは、なんと60cm~90cmにも及んだといいます。
このような髪型にするために、欠かせないのがかつらです。
一体どうやって作っていたのでしょうか?
まず、馬や羊の毛でできたクッションなどの上に、針金で骨組みをして土台を作ります。そこに入れ毛やつけ毛をふんだんに用いてボリュームを出し、香油やカラフルな髪粉で仕上げをしていき、最後にリボンや羽などの飾りをつけて完成です。
マリー=アントワネットお抱え結髪師のレオナール・オーティエが中心となり、流行ヘアスタイルを次々と世に送り出しました。
しかしこの奇抜な髪型の流行は、長くは続きませんでした。
完成したら何週間も同じ状態だったという不便さや、マリー=アントワネットが出産を機に巨大な髪型をやめて自然な髪型になったということ、哲学者のジャン=ジャック・ルソーの「自然に帰れ」という思想の影響などがあるといわれています。
このあと、フランス革命を経て女性たちのよそおいはどのように変化していくのでしょうか?次回をお楽しみに!
《二等分された二人用馬車、またはご婦人たちの檻》 1770年代後半 フランス