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2019.10.10
現代でも時折見かけるフェイスペインティング。イベントのときなど、顔をにぎやかに彩ります。
今から約300~500年前のフランスでも、フェイスペインティングのようなお化粧が一世を風靡しました。16世紀中頃から18世紀末にかけて上流階級の間で流行したそのお化粧は「パッチ化粧(つけぼくろ)」というものです。
もともとのパッチ(ばんそうこう)は、歯痛止めの膏薬や、天然痘による後遺症を隠すためにベルベットを肌に貼ることでした。それが16世紀になると、おしゃれのひとつとして肌を彩る役割を与えられたといいます。しっかりと白粉を塗りほほ紅をさした顔に、さらに黒い飾りをほどこすことで、より肌の白さを強調するねらいがありました。上流階級のなかでは年齢や性別関係なく大流行し、宗教的に批判的な立場をとっていた聖職者のなかでも、パッチ化粧を施す人がいたほどの人気だったといいます。
17世紀後半になると、パッチは円形だけではなくなります。月型や星型、ハート型、ひし形、さらにはキューピッド型や馬車型も登場。それらは絹やベルベット、サテン、紙などで作られ、最先端のおしゃれとして数も多くつけるようになりました。また、パッチの位置によって、「情熱的」などの意味づけがされるようになったといいます。
『服装の歴史』 オーギュスト・ラシネ 1888
17世紀のパッチ化粧をする貴婦人。