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2019.08.03
香水やハンドクリーム、バスグッズ、あるいは柔軟剤など、現代では様々なかたちで香りを楽しむことができます。一方で日本の伝統的な香りというと、「香」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
香は奈良時代頃、仏教伝来とともに日本に伝わったとされています。香は仏教行事のほか、防虫剤としての役割も果たしました。その後、平安時代には貴族たちが香を日常生活に取り入れ、鎌倉・室町時代になると香りを鑑賞する作法である「香道」が確立しました。この浮世絵に描かれている江戸時代の女性は、まさしく香道具を広げて香りを聞いているところです。
香道が最盛期を迎えた室町時代を経て江戸時代になると、香りを楽しむいろいろな方法が発達していきます。そしてそれは公家や武家だけではなく、裕福な町民や遊郭の間にも広がっていきました。
香のもととなる「香木」は、大変貴重で高価なもの。裕福な町民はそのような貴重な香料を複数混ぜて絹の袋に入れて外出時に携帯したほか、香を焚いて着物に香りをつけたり、木や陶磁器、竹などでできた「香枕」で香を焚き、髪に香りをうつすなどして楽しみました。
10回に渡ってお送りしてきた、江戸時代の「お化粧ヒストリー」は今回で一区切りです。次回からはまた別のテーマの「お化粧ヒストリー」をお届けいたします。お楽しみに!!
《江戸名所百人美女 小石川牛天神》 三代歌川豊国 安政4年(1857)
武家の後室と思しき女性が香道具を広げ、香りを聞いている。左手に持っているのは聞香炉(ききごうろ)。